トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ショーケース

お肉屋さんのショーケースに、「ブタ(天国)」と「ブタ(地獄)」。

造花

造花に、蝶の死骸がセロハンテープで貼り付けられている。

アラーム

猫を捨てに行くために夜中の時間にセットされたアラーム。

がんばれー

近所の子どもたちに「がんばれー、がんばれー」と応援されながら、おそるおそる殺虫剤を舐めてみる。

どこへ

夜中の二時。横断歩道を手を挙げて渡る幼稚園児。どこへ?

げらげら

我が家に宗教の勧誘に来たおばさんが、庭の木の根元にぼくがアイスの棒で作った金魚の墓を見て、げらげら笑い出した。

ぼくらも

散歩中、彼氏がふと立ち止まり、誰もいない墓地をじっと見つめた後とつぜん、「ぼくらも踊ろう」と私の手を取って墓地の中に入っていく。

こぶたちゃん

我が家では、ママが表札にこぶたちゃんのシールを貼っている家の子とは、喋っちゃいけない決まり。

理科の××先生が、人体模型の心臓を洗っていた。「何で洗ってるんですか?」「……ぼくのよだれがついてしまったので……」

SNS

毎日、同じ時間に、同じ祖母の遺影をスマホで撮ってSNSにアップしている。高評価がすごくつく日とそうでもない日があって、面白い。

わくわく

「今度の実験も、わくわくしますね」と、研究員が所長に話しかけながら、手慣れた手つきで作り上げていく、三百本目の首吊り縄。

たわし

「ちょっと、おばあちゃん。これ、鏡に映ってるおばあちゃんだから、たわしで擦っても消えないよ」「消えるよぉ」「消えないってば」「消えるよぉ。私のお兄ちゃんはこうして戦争に行かなかったんだからぁ」

まず

息苦しさで目が覚める。母が私の首を絞めている。「な、何……?」「あ……間違えた」母はすっと立ち上がり、「まずお父さんだ……」

カブトムシ

カブトムシを捕まえた。虫かごの中に、カブトムシ用ゼリーと、カブトムシ用精神安定剤を入れて飼う。

地蔵

「あの地蔵ヤバくね?」などと話しながら、女子高生の集団が、お互いの腕や太ももの傷を見せあっている。

調理実習の時、同じ班の肉持ってくる係のやつが、その朝弟が死んで、学校を休んだせいで、うちの班だけ肉なしだった。

ビチビチ

さっきおしっこを採った尿検査用の紙コップの中で、何かがビチビチ跳ねている。

いのち

あしたは学校でいのちについて学ぶので、まずは虫を殺してきてください、とのことだ。

どちらまで

タクシーに乗る。「どちらまで」「最近人が死んだ所」「じゃぁ、あそこかな」タクシーが走り出す。

妊婦

会社の後輩と外回りをしている時、妊婦が歩いているのを見るたび後輩が、「ぼくの子じゃないかちょっと訊いてきます」と駆け出す。

金魚

お嬢ちゃんのお友だちでね、死んじゃった子はいないかな?うちの屋台の金魚はね、みんな、死んじゃった子たちの生まれ変わりなんだよ。すくってあげるといいよ。おじちゃんはね、どれがどの子かわかるんだ。例えばね……。

おかえりなさい

おかえりなさい。戸棚にあなたの赤ちゃんが入っています。

届かない

ぼくには高くて届かない冷蔵庫の冷凍室の扉を開け、中を覗いたお父さんが、「やっぱりママは可愛いなぁ」とつぶやく。

福耳

ほとんど同じ子が二人いたので、福耳の方の子を引き取って養子にした。

ゴミ捨て場に腕が二本捨てられている。まだちょっと動いている。あれ、おにぎりを作る動きだから、お母さんの腕かな?

まぶた

棺桶の中の祖母の遺体のまぶたにセロテープが貼られていて、むりやり目が閉じられていたが、今日葬儀の時に見たらガムテープになっていた。

五時

新聞配達をしていたら、路上に、下半身裸のおじさんがいて、「今何時?」と訊かれた。「朝の五時です」するとおじさんはおもむろにズボンを履き始めた。

マンホール

母と散歩中、マンホールの下から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。恐ろしくなって母を見ると、母は微笑んで、「あなたにもああいう頃があったのよ」

知恵の輪

息子の墓前に供えた知恵の輪が、数週間後に墓参りに行ったら、解かれていた。

笑顔

「おかえりなさい」と久しぶりに笑顔で迎えてくれた妻だが、触角をさかんに動かしているので、やっぱりまだ浮気を疑っているようだ。