死んだ命を生き返らせる手品を思いついた手品師が、ペットの金魚の水槽に洗剤を注ぎ込んでいる。
高級レストランで厚切りのステーキを平らげた帰り道、母は「口直し」と墓地に寄り、墓前の花を食べ始めた。
依頼は四百字詰め原稿用紙二枚だから、八百匹の蝿を殺さなければならない。
あれは夕日そっくりだが、自分の足元の影を見ると、どうも違うようだ。
駅の床に「遺書」と書かれた封筒が落ちていて、みんな避けていたので、裏返して「遺書」の字を隠してあげた。
このスマホには火葬場の写真がプリセットで入っているので、わざわざ火葬場を撮る必要はない。
夕暮れの公園で、蟻を一匹潰すたび、自分の影の色が薄くなっていくことに気づく。
法律が変わったので、夕焼けの色も変わった。
誕生日に幼い妹から、可愛い絆創膏とナイフをセットで贈られた。
市民公園の木に吊されている市民共用の首吊り縄は、誰も使わないため、子どもたちがボールを投げて輪に通す遊びをしている。
電車が処刑場の傍を通る時、乗客たちは皆スマホから顔を上げて処刑場を見たが、今日は誰も処刑されていないので、再びスマホに目を戻した。
夏休みの宿題の自由研究のために、義姉を浮気させる。
今朝、地平線の上に、太陽の代わりに「GAME OVER」の文字が昇った。
夜道に捨てられていた人形を拾い上げると、生温かかった。
カエルがいなくなった田んぼに、「カエル」と書かれた紙片が無数に浮いている。
妊婦のお腹の中に迷子のお知らせが響く。
においに興味があって、その少年は煙草屋に放火した。
もうここ数百年の間ずっと、蘇生薬のCMに、俺の大嫌いなタレントが出続けている。
僕の家のリビングのテーブルの真ん中には頭蓋骨が置かれていて、はねたミートソースやそばつゆで汚れている。
昨日は街の悪意報知器が一度も鳴らなくて不気味だった。
宝石店で指輪を眺めていた品のいい女性が突然、自身の左手の薬指をへし折った。
その男はある日、妻の頬をぶつたびに自身の利き手が変わることに気づいた。
こないだスマホがアップデートして、死んだ人からの着信を自動的に切る機能が追加された。
その男の履歴書の「賞罰」の欄には、「幼稚園児の時ハエを一匹殺しました」と書かれていた。
火葬場の煙突をイメージしたこの筒状のお菓子の内側についている黒い物は焦がした砂糖です。
もうすぐ電車が来る駅のホームで、汚い格好のおじさんに、「命の恩人に興味ありませんか」と話しかけられた。
公衆便所の鏡に貼られている「使用禁止」の紙をめくったら、知らない人が映っていた。
天気予報によると、明日は指が降るそうだが、左手の薬指が多い見込みなので、プロポーズにぴったりな日だと気象予報士が冗談を言っている。
道端の雪だるまの腹に、へその緒に見立てた靴紐がささっていて、冬風に時々揺れている。
あてどなく歩いている時、霊柩車を見かけたので、ポケットに手を入れ、恋人の死体から切り取った左手の、親指を、ぎゅっと握りしめた。