超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ピアノ教室

無理矢理通わされているピアノ教室から帰る途中の夜道で、寺の坊主が笑いながら歩み寄ってきて、焼けた火箸で私の指先を一本一本潰していく。

貝殻

ふと訪れた砂浜で貝殻を拾い、耳に当ててみたら、貝殻の中から「君ノ耳ハ不味ソウダ」と言われる。

勤務先のラジオ局の先輩社員が暴力事件で逮捕され、彼に頼まれて録音してきた、「金魚の入ったコーヒーをすする音」のデータをどうしていいかわからない。

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指買い取り CM 百本指 女優 名前

家庭菜園

妻が育てている家庭菜園の土に、これまで私が殺してきた少女たちの名前が書かれた札が点々と刺さっている。

報告

一日に一度、知らないメールアドレスから、知らない動物園の老いた象の様子を報告するメールが届き、その中で象はだんだん衰弱していって、今日ついに死んだ。

地下室

その心療内科の地下室には、乳房がすり減った女神像が置かれている。

手紙

母からの手紙が入った封筒を開けると、瀕死の蝶が一匹現れて、ふらふらと窓から外へ逃げていき、便箋には「後少し開けるのが遅れていたら蝶はどうなっていたでしょうね」と母の字で書かれている。

裸足

自殺したクラスメイトの葬儀の案内に「裸足で来てください」と書かれていたので、裸足で行くと、俺以外の列席者が全員靴を履いている。

花嫁

深夜の台所で、夫が、「花嫁の入場で~す」と笑いながら、ゴキブリ用の罠の中にゴキブリを放り込むのを見てしまう。

電球

いつの間にか奥歯が一本電球に換えられていて、猫の肉を食うたび光る。

ラムネ菓子

おままごと用のおもちゃセットの中に、ラムネ菓子の精神安定剤が入っていた。

変換

私のスマホはいつも「じゅけん」を「呪犬」と変換する。

私から「ぎ」という言葉を盗んだ金魚が、「ぎ」と言うたびに口から吐く、いびつな形の泡。

校長

真夜中、誰もいない体育館の壇上で、校長が、虚空に向かって「人肉を食べたい」という話をし始めるが、マイクがキーンキーンと鳴り、次第に何を言っているかわからなくなっていく。

黒電話

地獄に置かれた一台の黒電話を亡者の群れが取り囲み、鬼に背中を鞭で打たれ続けても、何かからの着信をじっと待っている。

汚い車

近所を走る汚い車のへこんだフロントバンパーに、油性マジックで書き込まれた「ネコ」「ネコ」「ネコ」「ガキ」「ババア」の文字。

養鶏場

養鶏場の中に、鶏に混じって、手元のスマホをつまらなそうに眺めながら、次々と卵を産む人間の女が。

よく混ぜられた猿液は、この機械でついに猿になります。

先に

当店では、恋人より先に食肉加工場に送られた牛の肉と、恋人が先に食肉加工場に送られた牛の肉がございますが、どちらになさいますか?

ぬいぐるみ

娘が遊んだ後のぬいぐるみが、娘が寝た後、私の部屋に入ってきて、睡眠導入剤を数粒掴み洗面所へ歩いていく。

墓石に水をかけるのは、墓石から染み出てくる黒い水を洗い流すためではないと、結婚してから知る。

火葬場の便所の鏡に、手の形に、煤がついている。

カタツムリの殻をかみ砕く音を頼りに、停電した家で母を探す。

奥歯

私の口の中のある一本の奥歯は、肉を食うたび削れて、徐々に仏像の形になっていってる。

その小学校の飼育小屋で飼われていた七羽の兎のうち、六羽が不審死しており、残りの一羽は行方不明で、死んだ兎たちの傍らには、仏像の形に噛み削られた人参が転がっていたそうだ。

部屋

最近の蟻の巣の中には、蟻が首を吊るための部屋があるらしい。

その砂浜にはその日、開けると中に折り鶴が入っている貝が、ちょうど千個流れ着いた。

剃刀

この間、剃刀が流れ着いた砂浜に、一昨日、包丁が落ちていて、今日は日本刀が流れ着いていた。どうも、何かが、何かに対してイライラしているような感じを受ける。

医院

その町には、馬になる病を診る専門の医院があったが、今は廃墟になっている。