超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

色々ある

 夏祭り、浴衣を着た老若男女が行き交っている。様々な屋台が軒を連ねている。その屋台の中に、のれんに《蘇生》と書かれた屋台がある。店主の中年男は両手にクリームを擦り込みながら客を待っている。人込みの中を、少年の死体を背負った浴衣の少女が歩いている。少女は《蘇生》の屋台を見つけ、立ち止まる。おじさん一人お願い。少女は店主に言う。あいよ何時間だい。三時間。一緒に花火見るのかい。うん。花火が終わるのが二時間後だから二時間にした方がいいんじゃないかいその方が安いよ。ううん三時間でいいの花火の後も色々あるでしょう。あっはっはそりゃそうだ。店主は少年を三時間分蘇生する。少女は蘇生された少年と手を繋いで花火会場の方へ消えていく。三時間後、祭り会場に落ちているゴミの中に少年の死体がある。