超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

冗談のつもり

 義母の葬儀の前日、葬儀社が、弔意測定器を貸してくれた。明日の参列者の中に何人か怪しい人がいる、と相談したら、それでは、と貸してくれたのだ。動作テストを兼ねて、自分の弔意を測定してみた。ピロピロ。間抜けな音だ。数値を見る。まぁ、義母だから、こんなものだろう。眠っている夫の弔意を測定してみる。ピロピロ。まぁ、実母だから、こんなものだろう。台所の隅で丸まっていた飼い猫に測定器を向ける。冗談のつもりだった。ピーッ、ピピピ。深刻そうな音がして、機械が止まってしまった。エラー。私は、この猫を飼う時、義母だけが反対していたことをふと思い出した。