トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。

太陽

なお、明日支給される太陽は無添加ですので、久々のお洗濯日和となりそうです。

おやつ

今晩は久々にオーケストラを食べるから、おやつはオルゴールで我慢する。

かくれんぼ

かくれんぼに混ぜてやってもいいけど、次またあんなところに隠れたら、その羽根むしるからな。

末路

その焼き肉屋のメニューには「牛の末路」としか書かれていないので、それがどの部位であるかは値段で判断するしかない。

夕暮れ

自転車の籠に王冠をかぶった生首を入れて、革命帰りらしい女子高生が街を駆け抜けていく穏やかな夕暮れ、BGMは……。

へそ

ふいにへそから視線を感じたので、屈み込んでへそに目をやると、腹の中から、シャッ、とカーテンを閉める音が聞こえてきた。

どうですか、都会みたいにスイッチ一つで明るくなるんじゃなくて、蝋燭で一つ一つ火を点けた星空ですからね、味があるでしょう、味が。

まめ

ぼくのお母さんはまめな人だから、ぼくが生まれた時の包装紙もちゃんと取ってある。

スマホの電波の入りが悪くなると小雨になり、電波が入ると途端にざあっと雨が降るので、これ、天気予報のアプリじゃないかもしれない。

容量

テスト勉強中、容量がパンクしかけてきたので、耳の穴の中にプラスドライバーを突っ込み、ねじをゆるめて、鼻の穴から流れ出てきた英単語を、忘れていいやつとダメなやつにより分ける。

風景(風呂敷)

目の前に座っているお婆さんの頭上の網棚に置かれた、何かぶよぶよした物が入っているらしい風呂敷包みが、電車が海の近い駅に着くたびに、ちょっときゅっと固くなる。

きっかけ

ふと見たら母の遺影がウィンクしていたので、今の人と結婚することに決めたんです。

三倍速

「おじさん、三倍速で!」と注文を受けた金魚すくい屋台の親爺が、「あいよ」と答えつつ、水槽の中の金魚の脳味噌を待ち針で次々突いていく。

バター

××牛のバターは月明かりでしか溶けないので、夜間の調理がおすすめです。

バウムクーヘン

背中に羽の生えた素っ裸の男の子が、何もない頭上をしきりに気にしながら、バウムクーヘン屋の行列に並んでいる。

肩車

お隣の息子さんがお父さんに肩車をねだる声が聞こえてきたので、また夜空から星が一つ消えそうだ。

祖父の火葬が終わり、台車を取り出すと、右手と左手でじゃんけんをした形跡があり、チョキで負けた左側の骨が数本足りなかった。

日曜の朝

何度パソコンに取り込んで修正しても、日曜の朝には必ず、祖父の遺影には寝癖がついている。

アルコール

最近、理科準備室のアルコールの量が少しずつ減っているのだが、人体模型の肝臓が明らかに傷んで見えるのと何か関係があるのだろうか。

明け方、地平線に青いペンキの缶が並んでいたので、今日は晴れるだろう。

これは

これは、ほら、私、指に水掻きがありますんでね、指先ではまるように、特別にあつらえてもらった結婚指輪です、へへへ。

彼と私、製造番号の末尾の数字が一緒、だということを知っただけで、こんなに熱くなっている、のは、「恋」、なのだろうか。

スマホに蝿がたかってるってことはあいつからのメールだ。

同級生

同級生より少し大人っぽい彼女は、文字盤に「13」まで刻まれている腕時計をいつもしている。

ぱつん

ぱつん、と音がして満月が吹き飛び、巨大なボタン穴とともに夜空が弾けた。

家紋

姉が嫁いでいった家の家紋がどう見ても土星で、この頃姉と連絡がつかないことが何だか多い。

交代

遙か頭上高く、雲の横に浮かぶ浮き輪を見上げながら、最近額に生えてきたチョウチンを指でいじっている。

四人

ある朝目覚めると、女房と全く同じ顔の女が四人、俺を囲んで見下ろしていて、「えっ?」と驚く間もなく、「シンキングタイム、スタート!」、一斉に叫んだ。

市場

夢市場は今日も店主たちの寝息で活気づいている。

サクラ

明日は学校のみんなで「オハナミ」に行くので、明日の朝起きたら飲むようにと、「サクラ」色の薬のカプセルが配られました。