トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

一命を取り留め、病院の一室で目覚めた某国の指導者を見下ろす神様の足下に、花占いをした跡が。

死んだペットを埋めた土から生えてきた花のことを調べたら、花言葉が「うそつき」だった。

ギチギチ

誰も何も教えていないのに、娘は幼かった頃、ぬいぐるみや人形の首を輪ゴムでギチギチに絞めるという行為を繰り返していた。年齢を重ねるにつれその奇癖はなくなったが、十八歳の誕生日、娘は、大量のぬいぐるみや人形に取り囲まれながら、首を吊って死んだ。

支社

支社だけに死者が多いな、はっはっは。

トロフィー

たびたび音信不通になる友人の部屋に飾られている、電車、高層ビル、炎、ガス管、錠剤、そして首吊り縄を象ったトロフィーの数々。

ハイタッチ

ベランダで洗濯物を干していると、裏の家の痩せたおばあさんと、痩せた猫が、ハイタッチを交わしているのを見た。ああ、今日はどちらにもご飯が出たんだ。

お釣り

人を買った時のお釣りを犬のための募金箱へ。

結婚式前日、一匹の蜂が部屋に入ってきて、私の左手の薬指を刺して死んだ。結婚式当日、指が腫れて、指輪をはめられなかった。

風船

地球征服を企んでいる人のブログが、青い風船を撮った写真だけの記事を最後に、ぱたっと更新が止まった。

砂場

夕方、泣きながら公園の砂場を掘る中年の男。どうしましたか、と尋ねると男は、「おちんちん捨てられたぁ」と言ってますます泣き出す。

墓参り

母は月に一度、墓参りに行くのだが、母が線香を上げて手を合わせるその墓石にはただ一文字、「女」と彫られているだけだ。

お菓子

休日の昼下がり、住宅街に軽トラがやってきて、スピーカーから、「各家庭で、ご不用になった、人たち……お気持ち、察します……」と流しながら、お菓子を撒いて去っていく。

中に泥が詰まった、「嫁」と書かれたビニール袋を背に、男がおちんちんに付いた泥を洗い流している夜の安アパート。

わがまま

あと三分で地球が滅ぶのに、あなたは私の膝の上で、「あと五分眠らせて……」とわがままを言う。

めーやー

「めーやーめーやーめーやー」道を歩いていたら、そんな声が聞こえてきた。声のする方を見ると、縁側でおじさんが人形の目を釘で潰していた。「めーやーめーやー」……あ、「目、嫌」か。あ、おじさんこっち見た。あ。え。

ですか

「病気ですか」いつものように空っぽのベビーカーを押して診察室に入ってきたあのおばあさんが、ベビーカーの中を指さして言う。「病気ですか」

「飯!」怒鳴る父の前に、怯える母がそっと電池を置く。

絶滅

「はーい、絶滅でーす」と言いながら、何かをぐりぐり踏みつぶす子どもたち。

テレビ

竹やぶに不法投棄されているテレビに、時々、「なんでやねん」と表示されているのを見る。

ぐるぐる

うちの両親は時々、仏間の真ん中に方位磁石を置いて、針がぐるぐる回って止まらない時必ず、「お墓参り行こっか」と誘ってくる。

地獄

孫がまた悪さをしたので、そんなに悪いことばかりしてると地獄に落ちるよ、と言うと、孫は「いいよ」と答えた。どうしてさ。「地獄にはお母さんがいるもん」

腹の膨らんだ人形を手に、女の子が泣きながら産婦人科に入っていく。

相合い傘

絞首台の柱にふと目をやると、内側に、俺が殺した男と殺せなかった女の相合い傘が彫られている。

殺虫剤

ホームセンターの殺虫剤売り場で、目を輝かせたおじさんが、「ゆっくり死んでいくのないの、ゆっくり死んでいくやつ」と店員に尋ねている。

回転寿司

ふと入店した回転寿司のレーンに、寿司に混じって位牌が回っているが、必ずウニとセットで回っているので、生前ウニが好きだったのかな、と思う。

感電

ぼくの姉は電柱になった。沢山勉強して電柱になった。姉だった電柱には小さな膨らみが二つ生えていて、触るとすべすべして冷たい。電柱になることは姉の昔からの夢だったのに、祝福できないぼくがいる。見上げると電線に小鳥。感電死すればいいのに、なんて…

ぼくから

「ぼくから進化したよ!」というPOPがつけられた猿のぬいぐるみが置かれている地球人売り場。

お供え

あのお墓にはよく、百点のテストがお供えされていましたが、段々と点数が下がっていき、三十点を下回った辺りで、すっかり見なくなりました。お墓自体も、今ではあの有様です。

おもちゃ

子ども部屋に入ってきた母親が、「おもちゃはぁ、ちゃんとぉ、片づけなさいねぇ」と言いながら、足の裏にくっついてきた小さな骨片をつまみ、窓辺に並んだ骨壺に放り込む。

男が息絶えたのを確認すると、首吊り縄は白蛇へと戻り、明け方の森の中へするすると消えていった。