超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

うず

ラーメン屋でラーメンを食っている途中でトイレに立ち、席に戻ってラーメンを見ると、ナルトのうずまきの方向がさっきまでと逆回りになっている気がする。

鼻毛

父はもう何十年も私の鼻の中に籠って、鼻毛の一本一本に仏像を彫っている。

しりとり

前世で敵国の兵士どうしだった二匹のゴキブリが、台所の罠の粘着シートの上で、残飯しりとりをしている。

夜空

酔って「月かじってくる」と言って夜空へ飛んで行ったあなたを見送っていたら、終電を逃してしまった。

生け簀

仕込み中、生け簀の中の人魚から、ふいに家族構成を訊かれた。

楽屋

そのアリの巣の中にある小劇場の楽屋には、アリジゴクの着ぐるみがある。

雪だるま

この辺りは雪だるま料理の店が多いから、冬になると子どもたちの手は常にかじかんでいる。

宇宙飛行士

祖父が亡くなる日の前夜、眠る祖父の鼻の穴から、次々と小さな宇宙飛行士が出てくるのを見た。

夏の夜、河原で一人、あの人のことを想っていたら、胸から漏れる光に、蛾が集まってきた。

静寂

地球にいる母の死に顔が映るはずのモニターに何も映らず、宇宙の果てで、恐ろしい静寂に包まれている。

急須

何かが中で暴れているのでカタカタ動いている急須の蓋をぎゅっと押さえながら、祖母がぼーっとテレビを観ている。

釣り堀

釣り堀の水槽の底で二人の老人が将棋を指していて、負けている方の老人が、俺が垂らしている釣り餌を時々食べてしまう。

嫁入り道具

彼女の嫁入り道具は、銃弾が一発だけ入った拳銃一つだけだった。

サイコロ

余命を決めるサイコロを、神様がなくしちまったから、こんなことになってんですよ、もう。

地獄で炎に焼かれている時、死んだお袋が乗っていたママチャリのキィキィという音が、遠くから近づいてくることに気づく。

ガサガサ

手術の前夜、病室の暗闇に、ガサガサと、千羽鶴が共食いしている音が響いている。

木漏れ日

今日はいい天気なので、「木漏れ日」と書かれたチューブからにゅっと木漏れ日を絞り出し、地面に塗っていく。

景品

パチンコの景品でとった流れ星を夜空に投げて、明日もパチンコに勝てますようにと願いを込める。

光る人

何もなくなった宇宙空間の真ん中で、宇宙飛行士が、光る人に、お尻ペンペンされている。

お悔み欄

新聞のお悔み欄の祖母の名前を指さして、祖母の幽霊がにこにこ笑っている。

故郷

商店街を歩くおばさんたちの買い物袋の中からキリンの首が飛び出ているが、そのキリンたちがみんな同じ方向を見つめているので、彼らの故郷はその方向にあるらしい。

てるてる坊主

燃え盛る家の軒下に吊られているてるてる坊主が、消防車から噴射される水をじっと見ていた。

墓地

夜、墓地に布団を敷いて眠っていたおじさんに、「北枕ですよ」と教えてあげる。

バナナごっこ

部屋で独り、バナナごっこをしていると、昔撃ち殺した猿のことを思い出します。

お隣の奥さんが、果物屋の店先で、胸にぽっかり空いた穴にはまるオレンジを探している。

餃子

ラーメン屋の壁に「餃子は震えが止まってからお召し上がりください」との貼り紙があり、餃子を頼んでみると、皿に盛られた五個の餃子のうち二個しか震えておらず、店主が「お客さん、気に入られてるね」と笑う。

受理

くしゃくしゃの離婚届を受理する。

テレビの生放送の天気予報を終えた恋人から、「今日も嘘ついちゃった」とスマホにメッセージが届く。

つかまり立ち

息子が父のミイラでつかまり立ちをした瞬間、父のミイラは役目を終えたかのように粉々に崩れた。

着付け

そうだ、確か君のお母さん、人間の皮の着付け、出来るんだよね?