2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
お魚の影もちゃんと食べなさい。
僕はクラスの飼育係だから、この人魚に恋してはいけない。
その宇宙人は、地球のお土産に、殺虫剤を一つ持って、星に帰った。
くしゃみしたら鼻の穴からアゲハチョウが飛び出したので、何かとんでもない噂話をされているようだ。
目が見えない飼い猫のひげが夕日に触れて焦げた。
母の墓石に埋め込まれているパチンコ台で、友人の葬式の香典にしようとしていた金をすってしまい、母のことがますます嫌いになる。
床に落ちていた埃の塊を指でいじりながら窓の外を見ていたら、急に指が痺れてきて、見ると、埃の塊が仏像の形になっている。
夜の寺の暗闇の中で、仏像の触角が、うつむく罪人の胸をちょんちょんと触っている。
紙幣の肖像にナメクジが描かれている小国に、ある夜大量の塩が運び込まれる。
街角で、「蝶を救おう」と書かれたタスキをした人が、通行人に造花を配っている。
彼らの脳味噌はつるつるなので、クレーンゲームのアームがなかなか引っかからなくてもどかしい。
古本屋に置かれている空気清浄機のフィルターに詩がびっしり張り付いている。
新しい仕掛け時計を作るので、十二本の首吊り縄を持って街へ出かける。
死んだ子どもたちの運動会が終わり、火葬場の煙突から、今年は赤色の煙が出てきた。
月が久しぶりに失恋したというので、今夜は町じゅうの人々が電気を消してカーテンを開けている。
玩具屋で拳銃の玩具を手に取って眺めていたら、店主のおじさんが「君の前世は拳銃自殺だったね」と話しかけてくる。
哺乳瓶を兼ねているロケットがその星へ飛ばされるのも、今日で最後だ。
今夜も帰宅して脱いだ防護服の、月光が当たった所が、焦げ臭い。
「ただいま皆さんの影のデータを集めております……」というアナウンスとともに、夕日が沈んでいく。
縁側に座ったおじいさんが、庭に米を撒き、集まってきた雀を捕まえて、一羽一羽の電池を抜き始める。
死なない姉弟が、ストップウォッチの表示をちょうど一億年で止める遊びに興じている。
ベルトコンベヤーから弾かれた不良品の惑星の大地は、無数の薔薇の花で覆いつくされていた。
燃え盛る動物園を眺めながら、この宗教は元々、ペットショップの売れ残りの猫が創始したのだということを思い出す。
夕日というものを見てみたいと願った子どもたちのために、大人たちは各々電子レンジを抱えて、地平線へと旅立った。
長いスカートでしっぽを隠して、ペット霊園へ墓参りへ行く。
電子の荒野に横たわるコンピューター技師の死体に、無数のマウスポインタがたかって、クリックを繰り返しているが、死体は二度と動かない。
値札にこのマークがついている子は、魂の再利用が可能です、とペットショップの店員が説明してくれた。
「これもあげるよ」と言って、金魚すくいの屋台のおじさんは、自身の腕からうろこを一枚剥がして、僕にくれた。
春、雪だるまが融けた跡に、雪の結晶の絵がプリントされた錠剤が一粒、落ちている。
とてもゆっくり走る霊柩車の後を、誰も乗っていない三輪車が一所懸命についていく。