超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

絆創膏とシャボン玉

夕暮れに、暗い顔をした女が、ベランダに出る。 夕日の中で女はシャツを脱ぐ。 女の腹には絆創膏が貼られていて、女がその絆創膏を剥がすと、小さな穴が空いている。 女はベランダから街を眺め、腹を優しくぽんぽんと叩く。 女の腹に空いた穴からシャボン玉…

チョコレートと鼻歌

停電の暗闇の中でチョコレートをかじっていると、どこからか鼻歌が聴こえてきた。 知っているような知らないような声で、知っているような知らないようなクラシックの曲の同じ場所を延々と繰り返している。 * チョコレートをかじり続けていると、やがて歯に…

人の焼ける煙を見上げながら歩いていたら、何もない道で足をひねった。 ただのねん挫と医者には言われたが、半年くらいぐずぐず痛みが引かなかった。

熱と指

湯が沸いてやかんがピーピー鳴き出したので台所に行くと、見知らぬ女がコンロの前にぼーっと立っていて、熱い湯気をしゅんしゅん噴き出すやかんの口に人差し指を突っ込んでいた。 蓋を開けたままのカップラーメンを握りしめながら、どうしたものか考えている…