超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

いらない服

太陽がしぼんでしわしわになってしまったので、みんなの家からいらない服を集めてきて太陽の中に詰めることにした。 みんなは少ししか持ってこなかったけれど、私の家にはいなくなった家族がたくさんいるから、私はたくさんのいらない服を持ってきた。 それ…

凛とした空の下に、山々の青が沈んでいる。 体を起こし、窓を開け、指を突っ込んでそれをかき混ぜる。 * 空の青と山の青と少しの雲の白が、渦を作りながら混ざり合い、窓の向こうがあざやかになる。 そうしたら指を引っ込めて、窓を閉める。 * 青と青と白…

昔住んでいた家の庭の隅には、私が幼い頃に亡くなった老犬の墓があった。祖母と私で作った手作りの質素な墓で、私は毎朝線香をあげ、墓の周りを掃除していた。 ある朝いつものように墓の前に行くと、墓碑が倒れ、土が掘り返されていた。カラスか何かのイタズ…

雨宿り

昔、妹と二人で遠い街に買い物に出かけ、その帰りににわか雨に降られた。 二人で病院の軒下で雨宿りしている時、急に水のにおいが濃くなって、鼻の奥がつんとした。 その後雨が小降りになってきたので駅に戻ろうとすると、妹が駅とは全然逆の方向にすたすた…

傘と骨

夜、ペットの熱帯魚に餌をやっているとインターフォンが鳴った。来客が訪れてくるような時間帯ではない。足音を殺して玄関のドアの前に立ち、そっとドアスコープを覗いたが、暗くて何も見えなかった。 仕方なくチェーンをかけおそるおそるドアを開けると、赤…