2020-01-01から1年間の記事一覧
よし、目覚まし時計をセットして、きちんと時間通り起きて、明日こそ、世界を終わらせなきゃ。
地球滅亡の日のテレビ欄を、いつもより少し遅く起きてきた父と見ている。
押入から出てきた古いうちわには、「昭和××年度 母祭り」の文字と、子どもたちが、培養液に浸けられたお母さんたちを楽しそうに物色するイラストが印刷されていた。
実家から突然送られてきた段ボール箱の宅配伝票には、品名の欄にただ「お前」とだけ書かれており、箱を開けてみると、しっとりと濡れた赤ん坊がすやすやと寝息を立てていた。
目も口も耳もない、何か白っぽいぶよぶよした生き物たちが、それぞれの皮を着始める、午前5時の動物園。
叔父さんが亡くなった時、同時にニセモノの叔父さんも死んだが、彼に敬意を表して、その棺桶には造花が入れられた。
「オトモダチ」と刻印された貨物列車が、ぼく一人をこの町に残して、遠くへ走り去っていく。
普段どこを探しても決して見つからない、亡くなったおばあちゃんが愛用していた旅行鞄は、毎年盆の時期になると、いつの間にか仏間にぽつんと置かれており、盆が終わる頃、やはりいつの間にか姿を消している。
ある夜、父に「弟、欲しくないか?」と訊かれたので、「まぁ、うん」と適当に返事をすると、父は「よし来た」と言いながら、ヘルメットとツルハシを持って夜の山に消えていった。
満月の晩に決まってやってくるそれは、見た目はふつうのゴミ収集車だが、運転手には顔がないし、墓地の前でしか停まらない。
お前の家の家族が、名前じゃなくて番号でお互いを呼び合ってるのには慣れたんだけどさ、何で犬が四番でお父さんが五番なの?
今朝は寒いねぇ、お地蔵さんの唇も切れてるよ。
母のレシピを再現したいが、流れ星の採り方がわからない。
「本当の私を抱いて」と涙ぐみながら、彼女はぼくにプラスドライバーを手渡した。
……待って、彼氏の羽音がする。
「今日は特別な日だから近づいてはいけないよ」と母が指さした火葬場の煙突を、神々しく輝く巨大なムカデが出たり入ったりを繰り返している。
昔は通販サイトで売ってる友だちなんてうさんくさかったけど、今は即親友になれるものも多いもんなぁ。
ぼくの手術のチケットが全然売れていないと聞き、落ち込んでいたら、「落ち込むと病気が悪化しちゃいますよ」と看護師さんにたしなめられたが、悪化すればチケットも売れるのではないかと思い、そこからはずっと落ち込むことにした。
××駅付近で起きた人身事故の影響で、運転士の笑いが止まらないため、現在運行を見合わせております……。
テスト勉強中、容量がパンクしかけてきたので、耳の穴の中にプラスドライバーを突っ込み、ねじをゆるめて、鼻の穴から流れ出てきた英単語を、忘れていいやつとダメなやつにより分ける。
病院から帰ると、客間で天使が正座していた。
その遊園地では、毎日開園前に、観覧車の中に羽をむしられた鳥の死骸を入れて、ぐるりと一周させるのが決まりになっている。
朝起きて空を見上げたら、羽根の生えた女の子が太陽に何か耳打ちしているのが見えて、その日は今年初の夏日になった。
あ、今の流れ星は、火星のパパからお金が振り込まれた合図だから、願い事しても叶わないよ。
「お前が作った地球人用の罠、メスしかかからねーのな」、そうからかわれて、火星人の少年は頬を赤く染めた。
「今日は残念ながら首吊り死体はありませんが……」と、丘の上の大きな木を示しながらバスガイドが言う。
おい、さっき黒い猫がふらっと来て、焼香だけして帰ってったぞ。
生まれてきた息子のおでこに「5点」のシールが貼られていたので、とりあえず剥がして冷蔵庫の扉に貼っている、もう一人生まれれば10点になって、どっちかを、「歌が上手い」か「絵が上手い」にできるなぁ。
毎週金曜日に届く地獄からのメールで、父がきちんと罰せられているかどうかを確認している。
海底に沈んでいたその宝箱の中から見つかったのは、タコの九本目の足だった。