2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧
今年の夏祭りの屋台に並んでいた林檎飴の中に、一つだけ心臓が混じっていたそうですよ。
「見せしめ」と書かれた紙が貼られた首のない白馬が、メリーゴーラウンドをぐるぐる回っている。
今日母が、盾にもなるという分厚い鍋の蓋を買ってきたのだが、母は料理中何と戦っているのだろう。
「あっ、目にゴミが入った」「どの目?」「四十七番」
誰もいなくなった夕暮の公園の片隅で、一人の女が青白く笑いながら、哺乳瓶に砂を詰めている。
今朝、久しぶりに黒い太陽が昇ったのを見て、ああ、あれからもう四十九日が経ったのだな、と思いながら、私たち人間も静かに喪服に着替えはじめる。
向かいのマンションのベランダの物干し竿に一つずつ糸でぶら下げられているパーツを全部組み合わせると、昨日この団地にやってきたあのセールスマンになるはずだ。
ある朝、ちょっといくら何でも暑すぎやしないか、と思いながらカーテンを開けると、全天がアルミホイルで覆われていた。
その踏切の遮断機はギロチンを兼ねているので、そこを通り過ぎる時は電車の片側に客が寄ってしまって危ない。
その伝説の猟師が通った後には、笑い死にした動物たちの死骸が転がっている。
雲が出ているわけでもないのに、影が薄い。と思ったら、太陽がうたた寝していた。おおい、と大声で叫んでみたり、手を叩いたりしてみたが、聞こえないらしい。子どもの頃は、空を見上げて、太陽さーん、と言うだけで気づいてもらえたものだが。私もそういう…
「私じゃない、私じゃないんですよ」と言うだけの留守電メッセージが100件溜まった次の夜、「私でした」と言う女が現れ、我が家に火を点けていった。
親友はセミの一種なので、口げんかするといつも勢いに負ける。
近所の定食屋の主人が、食品サンプルにするからとマネキン人形を買っていった。
そのおじさんは一歳、三歳、五歳、七歳、とぼくが奇数の歳になるたびやってきて、「プラモデルの型にするから」と言ってぼくの全身を採寸して去っていく。
お父さんからもらったお小遣いを貯めたお金で、お父さんの頭に髪の毛をインストールしたら、まだインストールされていないはずの涙を流した。
いつの間にか死んでいたので、庭の隅にアイスの棒を立てて作った金魚の墓に、毎日喪服の弔問客が絶えず、昨日はとうとう後追い自殺まで起きてしまった。
息子を膝枕しながらテレビを観ていた。「ママー」「なーに?」「ママの鼻の中からこっち見てる人、誰ー?」
新聞のお悔やみ欄を読む。相変わらずこの町は、「墜落」が多い。やっぱり、翼を過信しちゃだめだな。あくまで俺たちは実験体なわけだし。
バーの片隅で小さく口論を続けていた二人の男が、最終的に「警官は不味い」という意見で一致した。
ねんどであかちゃんをつくったら、よなきがひどいので、ねこにつくりなおしたら、ひっかかれたので、ずこうはもうきらいです。
今夜も書斎に現れた父の幽霊が、幽霊の存在を否定する論文を必死に書き進めている。
ぐうぐう眠る女房のパジャマをそっとめくり、へそを覗くと、緑色に光っていたので、明日は野菜を食べると吉。
今年も、死ねない人たちの村の方から、喪服を燃やす祭の寂しげな音が聞こえてくる季節になった。
水族館の人魚の水槽の前に、「恋愛感情を抱かないでください」の注意書きが増えた。
ある日空を緑色の雲が覆い尽くし、何かが降ってきた。雨でもなく、雪でも雹でもなかった。それは「は」という文字だった。ははははははは。土砂降りの「は」だった。「は」は屋根にぶつかり、地面に叩きつけられるたびに、時に野太く、時に甲高い「は」の音…
ちょっとした冗談のつもりで、親友と首を交換してしばらく過ごしていたけど、いつまで経っても誰もそれに気がついてくれないので、あたしは、「あたしたち個性がないってことなのかな」と落ち込んだけど、親友は「あたしたち生き別れた双子なのかも」っては…
やけにもっこもこの入道雲だなぁ、と思ってよく見ると注射器が刺さっていた。
ニワトリのチューニングを合わせる部署からカラスのチューニングを合わせる部署へ異動になったので、この四月から勤務時間が朝から夕方へ変わりました。
早とちりな性格なので、お祭りの金魚すくいの屋台に行っても、金魚ではなく赤く塗った小指ばかりすくってしまう。