超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ベッドの上で抱き合ったまま砂になってしまった両親の中から、小さな熊手で蟹を見つけて妹にする。

ピアノ教室

無理矢理通わされているピアノ教室から帰る途中の夜道で、寺の坊主が笑いながら歩み寄ってきて、焼けた火箸で私の指先を一本一本潰していく。

物欲

物欲が急になくなったので、心配になって病院で診てもらったら、脳味噌の中に、巨大なダイヤモンドが見つかった。

貝殻

ふと訪れた砂浜で貝殻を拾い、耳に当ててみたら、貝殻の中から「君ノ耳ハ不味ソウダ」と言われる。

満員電車

満員電車の人混みの頭上を、紙飛行機がすーっと飛んでいくのを、誰も見ていない。

勤務先のラジオ局の先輩社員が暴力事件で逮捕され、彼に頼まれて録音してきた、「金魚の入ったコーヒーをすする音」のデータをどうしていいかわからない。

検索

指買い取り CM 百本指 女優 名前

家じゅうの窓ガラスや鏡を叩き割った女が、最後に長年愛用していた手鏡を踏んで割ろうとした瞬間、脚から鏡の中に吸い込まれる。

家庭菜園

妻が育てている家庭菜園の土に、これまで私が殺してきた少女たちの名前が書かれた札が点々と刺さっている。

報告

一日に一度、知らないメールアドレスから、知らない動物園の老いた象の様子を報告するメールが届き、その中で象はだんだん衰弱していって、今日ついに死んだ。

弱い棋士だった父が身を投げた海から次々と、腹の中に将棋の駒が入っている魚が獲れる。

猫を捨てる

一匹の猫を捨てるために、宇宙の果てまで来てしまった。

遊園地

雲の上に作られた遊園地に放火するために、スラム街の子どもたちが、腐った木や動物の皮を集めて飛行機を作ろうとしている。

葬式

葬式の参列者の一番後ろから前へ、前から坊主へ、坊主から死体へ、あくびがうつっていく。

地下室

その心療内科の地下室には、乳房がすり減った女神像が置かれている。

物干し竿

「物干し竿」という過去の時代の遺物を博物館で見ながら、太陽が腐る前の世界に思いを馳せる。

苺ジュースの時間

受験勉強が一区切りつくと、彼女は脳味噌を取り出してベッドに放り投げ、空っぽになった頭の中に苺ジュースを満たす習慣があるが、その苺ジュースの時間がなければ、もっと上の学校を狙えるだろう、と担任から言われている。

日傘

私以外の生物がいない星で、日傘をさして歩いていたら、太陽が拗ねていつもより早く沈んでしまった。

司書

妻が図書館に子を捨てたと涙ながらに告白したので、慌てて図書館へ取り戻しに行くと、子は既に、司書たちの手によって一冊の哲学書に変えられてしまっていた。

手紙

母からの手紙が入った封筒を開けると、瀕死の蝶が一匹現れて、ふらふらと窓から外へ逃げていき、便箋には「後少し開けるのが遅れていたら蝶はどうなっていたでしょうね」と母の字で書かれている。

父母の死体から生えてきた茸を兄妹で食べて暮らしているうち、兄は父に、妹は母に似てきて、ある日、お互いに対する恋愛感情を抱いていることに気づく。

悟り

その寺の坊主は全員禿げ頭に月と同じ模様が描きこまれており、悟りを開いた者から順に、夜空へと旅立っていくのだという。

浴衣

夏祭りに、彼女が着てきた浴衣の模様をよく見ると、彼女の死んだ妹や弟たちの名前がびっしり織り込まれている。

見本

胸の真ん中に「見本」という字を彫られた全裸の男が、昼下がりの団地で、マンションのドアを一つ一つ、泣きながら叩いて回る。

裸足

自殺したクラスメイトの葬儀の案内に「裸足で来てください」と書かれていたので、裸足で行くと、俺以外の列席者が全員靴を履いている。

海の底

海の底から、カッ、チャッ、ガスコンロのツマミをひねる音がした。

花嫁

深夜の台所で、夫が、「花嫁の入場で~す」と笑いながら、ゴキブリ用の罠の中にゴキブリを放り込むのを見てしまう。

背中に翼が生えている私の友人は、子どもの頃からずっと気象予報士を目指している。

日記

海の底に沈んできた、どうやら自殺したらしい少女の日記を、チョウチンアンコウの光の下で、少しずつ読み進める。

電球

いつの間にか奥歯が一本電球に換えられていて、猫の肉を食うたび光る。