2021-01-01から1年間の記事一覧
うちのおじいちゃんとおばあちゃんは、救急車のサイレンの音が聞こえてくるたび、「死ぬか?」「死にませんよ」というやりとりを必ずするので嫌だ。
天気予報の日本地図に、一カ所、赤い水滴のマークが。ねぇ、母さん、これって……。「ああ、こっちに来る頃にはかさぶたになってるわよ、大丈夫大丈夫」
ウィーン、ガシャンガシャンガシャン、ピピーッ、ブロロロロ……。「何してたの?」「おしっこ」
「おじいちゃんににらめっこ勝ったよー」と、息子が見せてきた父の遺影は、確かに笑っていた。
冬の朝、玄関のドアを開けると、誰かが作った雪だるまがぽつんとあって、その雪だるまが、頭に、先日盗まれた私の下着をかぶっている。
刑の執行日、俺は手錠を外され、樹液の染み出る場所に連行され、そこでニンゲンの子どもの到着をじっと待っていた。
お兄ちゃんどこ行ったの、といくら尋ねても、一人で帰ってきた下の息子は「おっきいわんわんがたべちゃったの」と笑顔で繰り返すばかり。
森で発見されたその首吊り死体には、全身に紙テープと紙吹雪が付着していたので、誰かがその死を祝った可能性が高い。
娘がノートに一所懸命消しゴムをかけていたので、ちょっと覗くと、クラスメートたちがぎっしり首を吊っている絵の中に、一本だけ消された首吊り縄があって、ああ、この子のことは助けたいのだな、と思った。
ある日突然、実は双子であることを公表し、世間を驚かせたその俳優の家には、画面を内側から破り割られたテレビが置いてあるそうだ。
人類が滅んだ後の美術館、絵に描かれた女たちの腹が、次々と膨らんでいく。
あー、あんた、あれでしょ。製氷皿に目玉並べる時、瞳の向きをきちんと揃えるタイプでしょ?
(地球の生き物は自動で死にます。)
その肉に貼られたラベルには、賞味期限とともに死刑執行日が記載されている。
息子がまたタトゥーを入れた。十七個目の、「タスケテ」の文字。
棺桶から妻の遺体が消えたとの連絡が葬儀社から来た夜の翌朝、味噌汁の匂いで目を覚ます。
真夜中、クリスマスの住宅街に、それぞれのイルミネーションが点滅しているが、あの家のあれ、あの形は首吊り死体じゃなかろうか。
「娘」が恋をした。我が社の株価が急騰した。
息子には猫を習わせています。月謝袋はいつも煮干しのにおいがします。
うわ、お経、不味っ、ぺっ、ぺっ。「そうかなぁ、もぐもぐ、私はお経、美味しいけどなぁ」あんた、死んでんじゃないのぉ?
冬、娘が指切りげんまんをしていた庭の木の枝に、春、見たこともない美しい花が咲き、そしてその木はゆっくり枯れていった。
夕方、路上、学生服を着た少年が、火葬場の煙突から出る煙を見ながら、股間をもぞもぞいじっている。
私の服を脱がした後、彼は何かに気づいたような顔で立ち上がり、壁に貼られたアイドルのポスターの両目に画鋲を刺して、「これで見てないよ」そして私をベッドに押し倒した。
(タップで危篤、長押しで死亡。)
明日も美人に映るように、鏡の前に鶏の生肉を供えて眠る。
今年もヒトイモの収穫が行われました。今年はこのうちの何割がヒトになれるか、農家の皆さんは期待に胸を膨らませています。
ペット用品売り場にひらがな練習用のドリルが置かれていた。
道ばたで眠る猫の背に、駐禁のステッカーが貼られている。
夜空を見上げると、獅子座の口元に星が増えていて、月の兎がいない。
廃品回収の軽トラが道ばたで停まったかと思ったら、運転席からおじさんが出てきて、「誰だ歌ってるやつは」と叫びながら、鉄パイプで荷台のゴミの山をめちゃくちゃに突きはじめた。