超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

社長の意向

 大学生の就職活動のシーズンが訪れ、殺虫剤を製造している我が社にも応募者が来た。我が社は社長の意向で、履歴書選考はなく、全員一次面接に来てもらうことになっていた。履歴書はその時に初めて目を通す。学生たちを面接していると、一人、目が異常に輝いている男子学生がやってきた。履歴書を見ると「前世」の欄に「蝿」と書かれていた。前世は蝿だったんですか。はい。学生は元気よく返事をした。うちは殺虫剤を作っているんですが。冗談まじりにそう言うと学生は、はい御社の殺虫剤で死にました、と答えた。我々が顔を見合わせていると学生は、それがすごく気持ちよかったんです、と言った。その瞳はますます輝いていた。彼は社長の意向で、二次面接に進んだ。