超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

宝石のマーク

 夕方のニュース番組を観ていた。天気予報のコーナーが始まった。明日の天気図の、私たちの街に、宝石のマークが出ていた。明日は、私たちの街に、神様が宝石を降らせるらしい。神様に憐れまれているのだ。確かに、この数か月、この街にはろくなことがなかった。殺人も誘拐も多かった。私の家も放火の被害に遭ったっけ。でも、だからといって、宝石が降ればいいというものでもないことは、昨年のあの国の事件を思い出せばわかるはずだ。神様は何でこんなことをするのだろう。もしかして、わざとなのだろうか。背中に薄ら寒いものが走った瞬間、屋根の方から、こつり、と音がした。