行きつけの床屋のおじさんはいい人だけど、毎回髪を切りに行くたびに、髪といっしょにぼくの触角をつまんで切ろうとするギャグをやってくるので、ちょっとうっとうしい。

求人誌をめくっていたら、動物園が人を募集していて、「健康な方、履歴書不要」と書いてあったので、よく見ると餌の求人だった。

アー、スミマセン、アナタ、呪イ、ニオイ、シマス、ニオイ、シマス、呪イ、便利、デモ、タクサン、ダメヨー。

亡くなったおばあちゃんのパーツを一部に使った扇風機が、葬儀の後しばらくしてから送られてきた。時折お父さんが、その風を浴びて、泣きながら寝ている。

月の光が弱くなってきたので、でっかいピーラーを積んだロケットが月へ飛んでいく。剥かれた皮は海に落ちて、クラゲの餌になるそうだ。

仕事で訪れた雑居ビルのエレベーターは、一番上の階数ボタンの横に、ガムテープの切れ端が貼られていて、汚い字で「自殺 ヤメテ」と書かれている。

うちのお母さんは、火曜日だけ、ご飯を作る時、必ず白衣を着ている。お母さんの作るご飯は、火曜日だけ、必ず不味い。

「ほほえみ」と題された油絵に描かれた貴婦人が全然笑っていないので首をかしげていたら、油絵の下に羽ぼうきが落ちていて、「笑ってない場合はくすぐってください」との貼り紙が。

今年の正月も、お父さんが神社で家族分買ってきた「家内安全」と書かれた液体を注射器で。

「私が死んだらひっくり返してちょうだいね」と言って、祖母は今日も砂時計を砕き中の砂を飲んでいる。

お前のじいちゃんの魂食べたら舌が真っ黄色になったんだけど、お前のじいちゃん、何が原因で死んだの？蜜柑の食べ過ぎ？

幼稚園へ向かう道の途中にあったお地蔵さんの口の周りに血がついているのを見て首をかしげた私の手を引き、「いい子にしてれば大丈夫」と祖母はつぶやいた。

死んだペットを埋めた土から生えてきた花のことを調べたら、花言葉が「うそつき」だった。

一命を取り留め、病院の一室で目覚めた某国の指導者を見下ろす神様の足下に、花占いをした跡が。

ある朝、蛇口の栓をひねったら、管から女のものとおぼしき指がにゅーっと出てきて、止まる気配がないので、引っ張ってぷちっと切ったら、外から「ぐゃっ！」と声がして指は蛇のように逃げていき、そしてその月、とんでもない額の水道料金を請求された。

誰も何も教えていないのに、娘は幼かった頃、ぬいぐるみや人形の首を輪ゴムでギチギチに絞めるという行為を繰り返していた。年齢を重ねるにつれその奇癖はなくなったが、十八歳の誕生日、娘は、大量のぬいぐるみや人形に取り囲まれながら、首を吊って死んだ。

たびたび音信不通になる友人の部屋に飾られている、電車、高層ビル、炎、ガス管、錠剤、そして首吊り縄を象ったトロフィーの数々。

支社だけに死者が多いな、はっはっは。

人を買った時のお釣りを犬のための募金箱へ。

ベランダで洗濯物を干していると、裏の家の痩せたおばあさんと、痩せた猫が、ハイタッチを交わしているのを見た。ああ、今日はどちらにもご飯が出たんだ。

結婚式前日、一匹の蜂が部屋に入ってきて、私の左手の薬指を刺して死んだ。結婚式当日、指が腫れて、指輪をはめられなかった。

「見えない部分こそお洒落にしなきゃ」そんな友人のアドバイスを受けて、ぼくは歯車の専門店に出向いた。

地球征服を企んでいる人のブログが、青い風船を撮った写真だけの記事を最後に、ぱたっと更新が止まった。

今日の晩ご飯は「魚」のフライだった。身の詰まっている「田」の部分だけ食べて後は残したら、父さんに「下の「、」もカリカリで旨いぞ」と言われた。

鏡に映った時計が二分進んでいる。

ある新機種のスマホについてスマホで調べていたら、手の中のスマホがどんどん熱くなってきた。怒ってるのか、恋しちゃったのか。

母は月に一度、墓参りに行くのだが、母が線香を上げて手を合わせるその墓石にはただ一文字、「女」と彫られているだけだ。

夕方、泣きながら公園の砂場を掘る中年の男。どうしましたか、と尋ねると男は、「おちんちん捨てられたぁ」と言ってますます泣き出す。

休日の昼下がり、住宅街に軽トラがやってきて、スピーカーから、「各家庭で、ご不用になった、人たち……お気持ち、察します……」と流しながら、お菓子を撒いて去っていく。

ファスナーが壊れたので動物病院へ。