超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2021-12-31から1日間の記事一覧

やりとり

うちのおじいちゃんとおばあちゃんは、救急車のサイレンの音が聞こえてくるたび、「死ぬか?」「死にませんよ」というやりとりを必ずするので嫌だ。

かさぶた

天気予報の日本地図に、一カ所、赤い水滴のマークが。ねぇ、母さん、これって……。「ああ、こっちに来る頃にはかさぶたになってるわよ、大丈夫大丈夫」

ガシャンガシャン

ウィーン、ガシャンガシャンガシャン、ピピーッ、ブロロロロ……。「何してたの?」「おしっこ」

にらめっこ

「おじいちゃんににらめっこ勝ったよー」と、息子が見せてきた父の遺影は、確かに笑っていた。

雪だるま

冬の朝、玄関のドアを開けると、誰かが作った雪だるまがぽつんとあって、その雪だるまが、頭に、先日盗まれた私の下着をかぶっている。

刑の執行日、俺は手錠を外され、樹液の染み出る場所に連行され、そこでニンゲンの子どもの到着をじっと待っていた。