ある日空を緑色の雲が覆い尽くし、何かが降ってきた。雨でもなく、雪でも雹でもなかった。それは「は」という文字だった。ははははははは。土砂降りの「は」だった。「は」は屋根にぶつかり、地面に叩きつけられるたびに、時に野太く、時に甲高い「は」の音を立てながら弾けて消えた。街全体が笑っているみたいだった。だが、ぼくらは震えていた。ははははははは。結局、一時間ほどで「は」は止んだ。しかし、ぼくらの耳には「は」の音がこびりついていつまでも離れなかった。ははははははは。そういうわけで、この街の人は、おかしいことがあると「くくく」と笑うようになったのです。別に悪いことを企んでいるわけではないのですよ。