裏路地に、どさっ、と音がして、振り返ると、靴のおじさんが道に転がっていた。仰向けに転がって、しかも笑っているってことは、明日はよーく晴れるのだろう。「ぼくは何もできないから、せめて天気占いの靴のかわりに、こうして毎日家の屋根から自分を放り投げるのさ」靴のおじさんは、ぼくにいつかそう教えてくれたことがある。靴のおじさんは夜が来るまで、道の真ん中で転がっている。近所の人たちみんなが明日の天気を確認するのを見届けてから家の中に戻るんだそうだ。野良猫たちは呆れておじさんを見てる。野良犬は時々おじさんを踏んでいく。でも、おじさんの天気占いはよく当たる。とにかく明日はよーく晴れる。