超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

亡霊

 夜道を歩いていると、粗大ゴミ置き場の周りに、何か人魂のようなものがいくつも漂っているのが見えた。近づいてよく見ると、それは焼き豆腐の亡霊だった。亡霊のすぐ傍には、使い古されたすき焼き鍋が無造作に捨てられていた。これの元の持ち主は、よっぽど焼き豆腐に恨みを買うようなことをしたらしい。焼き豆腐の亡霊は四角いくらげみたいで綺麗だった。ので、スマホのカメラで撮影して家に帰った。のだが、帰ってからふと「一応これって心霊写真なのか」と気づいて少し震えた。結局スマホに塩を撒き、写真はすぐに削除してしまったが、あの日以来、すき焼きに焼き豆腐を入れてしまったら何かが起きそうで、恐くて仕方ない。いや、仕方ないってほどではない。でも、ちょっと躊躇してしまう。