超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ポイント

 道を歩いていたら、ブロック塀の上に野良猫がいた。額を見ると、認定印が入っている。ポイントカード対応の野良猫だ。慌てて財布の中から野良猫ポイントカードを取り出し、早速撫でる。猫がゴロゴロと喉を鳴らす。ポイントカードを差し出すと、猫は喉を鳴らしたまま、右足の肉球でカードにスタンプを捺してくれた。「ありがとう」「ニャア」しばらく撫でていたら、猫はふいに立ち上がり、尻尾をふりふりどこかへ行ってしまった。カードに貯まったスタンプをしみじみ眺める。あと5ポイントで、スタンプが全て埋まる。全て埋まるとかわいい子猫がもらえるのだ。散歩がはかどるというものだ。猫と別れてさらに道を歩いていたら、車道に猫の死骸が転がっていた。車にひかれたらしい。思わず目をこらす。まさかポイントカード対応の猫じゃないだろうな。もしそうならもったいない。死骸の額が血で濡れていて、認定印が確認できない。車の列が、猫の死骸を右に左に避けながら流れていく。カラスが電柱の上から死骸を狙っている。車が途切れないから、近づいて確認ができない。ああ、気になる。本当に、ポイントカード対応の猫じゃないだろうな。もどかしい、もったいない。