気がつくと、消しゴムくらいの大きさになっていた。
窓辺に腰かけて、口笛をふいていた。
蝶が一匹、目の前を通り過ぎていった。
真っ白な羽が優雅に動くたび、全身にすずしい風を感じた。
*
気がつくと、電信柱くらいの大きさになっていた。
公園の真ん中に突っ立って、夕日を見ていた。
カラスが一羽、頭の上にとまってカーカー鳴いていた。
鳴き飽きたカラスが飛び立ったとき、つむじに涼しい風を感じた。
*
気がつくと、元の大きさに戻っていた。
病院のベッドの中で、おばあちゃんの手をにぎっていた。
おばあちゃんは窓の外を見ながら、静かにぼくをうちわであおいでいた。
ぼくが目を覚ましたのを見て、おばあちゃんは誰かを呼びに行った。
涼しい風はやんでしまった。