海にぷかりと浮かんで、ぼんやりと太陽を眺めていたはずだったのが、気がつくと俺のへそからは潜望鏡が生えていて、わき腹には丸い窓がいくつも取り付けられており、そこに集まって目を輝かせている子どもたちと、骨を伝わって聞こえてくる彼らの笑い声、ご機嫌な顔で笑うサンタクロースみたいな船長が舵を切ると、かちかちにこわばった体がぐっと深海に沈み、怪獣みたいな魚に鼻をつつかれていた。ほんの数時間前まで、たまの家族サービスに近場の海へやってきただけのサラリーマンだったのに、今じゃ俺の腹の中で子どもたちがビートルズを合唱している。少し急すぎる気もするが、こうなるのが運命ならば受け入れよう。地上に残してきた女房と子どもが気がかりだが、俺にはもうさよならを言う口も残されていないんだ。悪いね、愛してるよ。