超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

蝶も俺も

 夜、家に帰ると、玄関の上の方がほんのり明るい。よく目をこらすと、大きな蜘蛛の巣の中で必死にもがく蝶のシルエット、その蝶のシルエットの上を、プロ野球の結果を伝えるニュースが右から左へ流れていくのが見えた。

 電光掲示板に擬態する蝶だ。この辺で見るのは珍しい。

 じっと眺めていると、蝶はやがて動かなくなり、そのすぐ後、俺が応援しているチームの惨敗を伝える文章がつらつらと流れてふっと消えた。

 残念だ。
 蝶も俺も。