超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

絆創膏のおばさん

 スーパーマーケットでアルバイトをすることになった。
 初日、仕事の説明を一通り終えたチーフが、最後に「そうそう。絆創膏のおばさんが来たら、すぐに教えて」と言った。
「絆創膏のおばさんって何ですか?」
「そういう人がたまに来るんだよ」
「どんな人ですか?」
「見ればすぐわかると思う」
 何だかよくわからない。首をかしげているうちに店が開いてしまった。
 とりあえず指示されるままにバックヤードと店内を往復していると、しばらくして、精肉売り場の方が何だか騒がしい。行ってみると、野次馬の輪の中心に背の低いおばさんがいて、売り物の肉をパックの中から勝手に取り出している。
 慌てて止めに入ろうとしたその時、そのおばさんが、取り出した肉を何やら手元でいじくっていることに気が付いた。手元を覗き込むと、おばさんは何十枚もの絆創膏を生肉にベタベタ貼り付けながら、「お父さんが、お父さんが」と大粒の涙をこぼしていた。