涙が染み込んで、すっかりふやけてしまった古い顔を、爪の先で少しずつ剥がしながら夜道を歩く。
道に落ちた古い顔が靴の裏にくっついて、にちゃにちゃと嫌な音を立てている。
どうして失恋なんかで泣いてしまったんだろう。
……。
古い顔を全部洗い流す。爪に詰まった古い顔をつまようじか何かでほじくり出す。靴の裏を洗う。
家に帰ったらまずそんなことをやらなければいけない。その全てが面倒くさい。観たいテレビもあるのに。
……何で今日だったんだ。
そんなことをぶつぶつ考えているうち、気づけば古い顔はほとんど剥がれ落ちていた。
新しい顔を涼しい夜風が撫でていく。
この時の心地好さだけはちょっと好きだ。
……。
ちょっとだけだけど。