夜の商店で、缶詰を買った。寂しかったのだ。家に帰り蓋を開けると、女の綺麗な白い手首が現れた。
そっと手を握ると、握り返してきた。汗ばんで温かかった。爪には赤いマニキュアが塗られていた。
枕元に缶詰を置き、手を握って眠ることにした。白い手首はカーテンの隙間から射し込む月光に照らされて、ぼんやりと光っていた。
眠りに落ちる寸前、ラベルに印刷された日付が目に飛び込んできた。明日の朝まで。
朝目が覚めると、手首は既に消えていた。
缶詰の中には、白い土が敷き詰められていて、その上に赤い種が五粒落ちていた。
ラベルの説明に目を通す。これに水をやって月光に晒すと、美しい花が咲くらしい。
それを読んだ途端に、一気に気持ちが醒めてしまった。白い手首の持ち主の女が、得意げな顔でこちらを見ているような気がしたのだ。
白い土と赤い種は、出勤前に近所の川に流して捨てた。帰り道に川を覗くと、赤い種は川底にまだ沈んでいた。雑魚も食わないようだった。