超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

お面と電柱

 封筒を開けるとお面が入っていた。お面の顔は私に似ていて、というよりも私そのもので、私がこのお面をかぶってもあまり意味がないように思われた。ちょうど午後から、祖母の家に鶏肉を貰いに行く用事があったので、そのついでに電柱のでっぱりにお面を吊るしてそのままにしておいた。
 祖母の家からの帰りに同じ道を通ると、お面はなくなっていた。台所で鶏肉を食えるものと食えないものに選り分けながら、誰が私の顔を持っていったのだろうと急に不安になった。あれがお面だということはすっかり忘れていた。