鼠を捕まえたので、ペットの機械を猫モードにし、鼠を放り込むと、機械は嬉しそうに振動し始めた。
立ち食いそば店で隣にいるおっさんが食っているかき揚げの具が、どうも折り鶴のような気がする。
夏の昼下がり、風鈴の音にも致死量があることを知る。
救急車に、人の声を真似るぬいぐるみが置かれており、搬送される人々のうめき声を楽しげに真似ている。
近所の裏路地で野良猫の集会に出くわしたが、よく見ると集まっている野良猫のうち三分の一くらいが、誰かが置いた剥製だった。
楽器店に人間の形の楽器が置かれており、どうやって弾くのかと店主に尋ねると、店主は店の奥から首吊り縄を持ってきた。
地上の刑務所で自由時間が始まり、雲の上に腰かけていた釣り人たちは、刑務所の庭に向かって、釣り針を一斉に垂らした。
久しぶりに墓参りに行ったら、墓石がうっすら濡れていて、その液体の中で無数の蝿が溶けている。
アパートの隣室から聞こえてくる赤ん坊の泣き声に、ノイズが混じり始める。
冬の朝、自販機の傍に転がっている空き缶から、白い息が吐き出されている。
千羽鶴しか入っていないはずのゴミ袋の底に赤黒い液体が溜まっている。
お魚の影もちゃんと食べなさい。
床に落ちていた埃の塊を指でいじりながら窓の外を見ていたら、急に指が痺れてきて、見ると、埃の塊が仏像の形になっている。
夜の寺の暗闇の中で、仏像の触角が、うつむく罪人の胸をちょんちょんと触っている。
新しい仕掛け時計を作るので、十二本の首吊り縄を持って街へ出かける。
玩具屋で拳銃の玩具を手に取って眺めていたら、店主のおじさんが「君の前世は拳銃自殺だったね」と話しかけてくる。
今夜も帰宅して脱いだ防護服の、月光が当たった所が、焦げ臭い。
縁側に座ったおじいさんが、庭に米を撒き、集まってきた雀を捕まえて、一羽一羽の電池を抜き始める。
値札にこのマークがついている子は、魂の再利用が可能です、とペットショップの店員が説明してくれた。
その動物園には、拷問用の鏡があるそうだ。
電車で隣に座った肥満児が、スマホで「肥満児の肉 味」で検索している。
夕方、「今夜の月を食べないでください」とスピーカーから流しながら走っている軽トラの運転手の背中に、羽が生えている。
治療のかいあって、一日一回、血とともに口から吐き出されるおみくじが、「吉」から「中吉」になってきた。
カップ麺の中から、首吊り縄の形の麺を見つけて、ラッキー。
鼻歌を歌いながら歩いていたら、道に耳が落ちていて、聞かれたら恥ずかしいと思ってとっさに黙って通り過ぎた。
火葬場の煙突の喉仏が煙の動きに合わせてごきゅごきゅと動いている。
刑務所の屋根の上のアンテナがぐるぐる回っているのを見て、今日もみんなをいい人にしているんだな、と思う。
恋人のスマホを調べている時、恋人の物ではない指紋を見つける。
無事子どもも生まれて、今は子宮内に書かれた数式を消す薬を飲んでいる。
コンビニに併設されている火葬場にある日、「ゴミを焼かないでください」との注意書きが貼られており、悲しい気持ちになった。