ニュース番組をぼんやり観ていたら、アナウンサーが「訃報です」と言った後、ニヤニヤ笑うだけでそれから何も言わない。
何もいないペットショップに、「※イメージ」と書かれた犬の剥製が置かれている。
友だちのお葬式をしたいのに、電子レンジはお母さんが使ってる。
留守中に誰かが私の部屋に侵入したらしいが、電灯の紐が短く切られていた以外に、異変は無かった。
風で膨らんだカーテンが、窓を閉めても元の形に戻らない。
生物の死骸にしか咲かないはずの花が、月面にびっしり咲き誇っている。
菜食主義者の恋人に、肉切り包丁で愛撫されている。
日曜日、観賞用刑務所に収監する囚人を買いに出かける。
理科の授業中、居眠りをする男子に、先生がスポイトを持って近づいていき、彼の耳の穴から何かを吸った。
コンビニの募金箱の中に小人が閉じ込められていて、硬貨は痛いから入れないでくれ、と懇願してくる。
網でイカを炙っている時、縮こまっていくイカがゲソの先端で空中に「タコ」という文字を書いていることに気づく。
目の前を通り過ぎていった霊柩車が、ゆっくりバックで戻ってくる。
右目に眼帯をつけた大道芸人が動かす操り人形が、自身の右目をかきむしっている。
コンビニの喫煙スペースで煙草を吸っていたら、「火を貸してください」と、火葬場の職員がやってくる。
お父様の処刑の日は晴れさせてあげてね、お母様。
鼠を捕まえたので、ペットの機械を猫モードにし、鼠を放り込むと、機械は嬉しそうに振動し始めた。
立ち食いそば店で隣にいるおっさんが食っているかき揚げの具が、どうも折り鶴のような気がする。
夏の昼下がり、風鈴の音にも致死量があることを知る。
救急車に、人の声を真似るぬいぐるみが置かれており、搬送される人々のうめき声を楽しげに真似ている。
近所の裏路地で野良猫の集会に出くわしたが、よく見ると集まっている野良猫のうち三分の一くらいが、誰かが置いた剥製だった。
楽器店に人間の形の楽器が置かれており、どうやって弾くのかと店主に尋ねると、店主は店の奥から首吊り縄を持ってきた。
地上の刑務所で自由時間が始まり、雲の上に腰かけていた釣り人たちは、刑務所の庭に向かって、釣り針を一斉に垂らした。
久しぶりに墓参りに行ったら、墓石がうっすら濡れていて、その液体の中で無数の蝿が溶けている。
アパートの隣室から聞こえてくる赤ん坊の泣き声に、ノイズが混じり始める。
冬の朝、自販機の傍に転がっている空き缶から、白い息が吐き出されている。
千羽鶴しか入っていないはずのゴミ袋の底に赤黒い液体が溜まっている。
お魚の影もちゃんと食べなさい。
床に落ちていた埃の塊を指でいじりながら窓の外を見ていたら、急に指が痺れてきて、見ると、埃の塊が仏像の形になっている。
夜の寺の暗闇の中で、仏像の触角が、うつむく罪人の胸をちょんちょんと触っている。
新しい仕掛け時計を作るので、十二本の首吊り縄を持って街へ出かける。