超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

竹とんぼ

 線香花火の光を囲むつま先の中に、私たちのものでない下駄履きの子どものつま先が混じっていた。不思議と違和感も恐怖も覚えなかったので、放っておいたら、子どものつま先は、線香花火の玉が落ちるのと同時にふっと消えてしまった。その晩、夢に知らない男の子が現れて、どこかの家の縁側で竹とんぼの作り方を教えてくれた。正直一生使わない知識だと思ったが、あれから十年以上経った今でも、なぜだか細部までよく覚えている。