超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

毛虫

 毛虫のようだ、毛虫のようだ、と言われ続けた眉毛がいつの間にかサナギになっており、ある晩その背中が割れて蝶が現れ、どこかへ飛び立ってしまう。しばらくすると玄関先に眉毛みたいな毛虫がいて、ぼくに軽く会釈をした後体を這いのぼってきて、目の上におさまる。そんなことを物心ついた時から繰り返している。ぼくの本当の眉毛に出会いたい、と思うこともなくはないが、その毛虫こそがお前の本当の眉毛だろう、と父は言う。父は蝶の標本を集めている。