かじかむ指先で自販機に小銭を入れ、缶コーヒーのボタンを押す。ガコン、とこもった音が聞こえて、取り出し口に手を伸ばす。
取り出し口の両端からは、透明のカバーを押しのけて、誰かの足首から先がはみ出している。その足首と足首のちょうど真ん中に落ちた缶コーヒーを拾い上げながら思う。
早く誰か片づけてくれないかな。
足首には慣れた。でも、飲み物が足首と足首の間に落ちてくるのが、何となく嫌なのだ。温かいとなおさら。
ため息をつきながらコーヒーを一口飲み、釣り銭を取ろうとした時、釣り銭口に髪の毛が詰まっているのが見えた。
これはいつからだろう。
多分初めて見る。
だからまだ怖い。
釣り銭は諦めることにした。