超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

20円

 かじかむ指先で自販機に小銭を入れ、缶コーヒーのボタンを押す。ガコン、とこもった音が聞こえて、取り出し口に手を伸ばす。
 取り出し口の両端からは、透明のカバーを押しのけて、誰かの足首から先がはみ出している。その足首と足首のちょうど真ん中に落ちた缶コーヒーを拾い上げながら思う。

 早く誰か片づけてくれないかな。
 足首には慣れた。でも、飲み物が足首と足首の間に落ちてくるのが、何となく嫌なのだ。温かいとなおさら。

 ため息をつきながらコーヒーを一口飲み、釣り銭を取ろうとした時、釣り銭口に髪の毛が詰まっているのが見えた。

 これはいつからだろう。
 多分初めて見る。
 だからまだ怖い。

 釣り銭は諦めることにした。