超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

カチッ

 ある朝、起き抜けにくしゃみをしたら、鼻の穴から換気扇の紐が出てきた。
 痛くも痒くもなかったけど一応病院に行ったら、レントゲンのすごいやつみたいな機械で検査されて、「多分心臓に繋がってます」と言われた。
「引っ張ったらどうなります?」
「さあ」
 さあってことはないだろうと思ったが、自分が医者でも同じことを言う気がしたので黙っていた。その後何だか色々な薬を出されたけど全部効かなかった。

 あれからしばらく経つが、結局、紐はいまだに鼻でぶらぶらしている。切ってしまおうかな、と考えなくもないけれど、辛いことがあった時に軽く引っ張ると少し涙が出てきて、なぜか「俺、明日も生きよう!」って気分になるからそのままにしている。