嫁いだ先の町の片隅に、小さな指屋があった。ある日の夕暮れ時、買い物帰りに、何気なくその指屋に立ち寄った。指屋の店内は薄暗く、かすかに香水の匂いが漂っていた。店員はいなかった。一番目立つ場所にある棚に、指を切り落とす器具が並べられていて、横に指の買取価格表が添えられていた。左手の薬指が一番高かった。私は自分の左手の薬指を見つめた。指を売る時は、指輪はどうするんだろう。そんなことを考えていたら、女性が店に入ってきた。女性は、店の隅の、指用接着剤のコーナーにまっすぐ向かっていった。彼女の指がどうなっているかは、店が薄暗くてよく見えなかった。