超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

死んだ風

 子どもの頃、道ばたで死んだ風を見つけた。落ちていた棒でつついてみると、死んだ風はさらさらとさびしい音を立てた。そっと持ち上げて顔に当ててみたが、ちっとも涼しくなかった。死んだ風をカラスがねらっていたので、カラスに持ち去られてしまう前に、足で踏み砕いて生きている風に混ぜてその場を立ち去った。その日は学校から絵日記の宿題が出ていたけど、ぼくはなぜか死んだ風のことは書かなかった。