超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

キノコ

 竹やぶに不法投棄された粗大ゴミの中に地球儀があった。古い古い地球儀だった。長い年月の間、雨と風とにさらされて、ふやけて、ほどけて、うじゃじゃけて、やがてある時錆びた台座を残して、地面に溶けていってしまった。地球儀が溶けた土からは、不思議な色のキノコが生えてきて、それを食ったものはみな、口から聴いた覚えのない歌が流れ出てくるという病気にかかってしまう。が、そのことを知っているのは竹やぶの周辺をねぐらにしているカラスと野良犬だけだ。ある老いた野良犬などは生ゴミを貪ることもできずにその歌を歌い続け、訪れた覚えもない大地と海の夢を見ながら死んでいったというから、くれぐれも初めて見るキノコには注意されたし。