超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

おたま

 夜空の星を眺めていたら
 とつぜん巨大なおたまが現れ
 ひときわよく光っていた一つの星を
 すっとすくい上げてそのまま暗闇へ消えていった

 食べ頃だったからなのか
 それとも煮えすぎだったからなのか
 理由はわからない

 だがせめて
 前者であってほしいと思う
 そしてできれば
 ぴかぴかのうちに食べてほしいと思う
 さらにできれば
 何もつけずプレーンのままでいってほしいと思う

 夜空の底から
 星を眺めることしかできない身としては
 そう思う