超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ホテル

 薄着をした女が、ホテルの廊下を歩いている。

 女は一つのドアを開ける。
 薄暗い照明の下のベッドに、人のかたちをした石が腰かけている。
 女は石を抱きしめる。

 石が崩れて隙間から枯れた花が顔を覗かせる。
 女は丁寧に花を抜き取り、枕の上に横たえる。

 女は深く息をして、部屋の電気を消し、後ろ手にドアを閉めて廊下に出る。
 女は抱きしめた時に口に入った砂利を指先で探りながら、次のドアを目指して廊下を歩く。