2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧
町にサーカスが来たので観に行くと、数年前に失踪したはずの父親が、調教師の鞭に合わせて火の輪をくぐっていた。
さていよいよ、皆様の前で、あの忌まわしい仏壇を斧で叩き割ります……新郎新婦初めての共同作業です、どうぞ拍手を……。
転入生ではなく、正確には、飼育小屋からの昇格らしい。
ゴキブリ用の毒団子を仕掛けるたびに家にやってくる親戚のおじさん。
あ、センサーが反応しましたので、成仏されたようですね。
家中のあらゆる物に歩数計を巻き付けて、一日放置してから見てみるのが、最近の私の楽しみです。
今回の最後の人類は理系の人だから、フラスコの中の新しい地球も丸々と輝いている。
えっ、「愛」のツマミ目一杯ひねっても、それだけなの?かぁわいそうぉ。
入学式の校長先生の話にも、担任の先生の話にも話題にのぼらなかったし、周りのみんなも気にしていないみたいだから、もしかしたら、校庭のど真ん中に建っているあの煤けた鳥居が見えているのは、ぼくだけなのかもしれない。
酔っぱらった勢いで田んぼの案山子を一体蹴り倒した翌日、その田んぼの前を通りかかると、昨夜蹴り倒した案山子がいなくなっていて、その他の案山子が全部喪服を着ていた。
私と見つめ合うことに彼が飽きないように、私はあの女の姿を瞳に彫った。
最近、近所の野良猫が子猫を連れて、俺の猫背を見学しに来るようになった。猫に認められた猫背、悪い気はしない。モテもしないが。
最近、祖母の背が明らかに縮んできているのだが、鏡に映る祖母の姿が明らかに大きくなってきていることと何か関係があるのだろうか。
雨の日の画廊の表に置かれた傘立てに、人物画と同じ本数の傘が。
後輩には第二ボタンを、音楽教師には右耳を手渡し晴れやかに卒業する。
旅先の古本屋で何気なく手に取った推理小説をめくってみたら、被害者の名前がすべて黒く塗りつぶされており、横に私のフルネームが書き添えられていた。そういえば昔、確かこの辺に転校していった同級生がいたっけ。
最近、神の名を口にするたび、舌を軽く火傷する。
娘の部屋には玩具箱が二つあって、どちらにもぎっしり人形が詰まっているが、片方の箱にはつたない字で「弔」と書かれている。
「迷子かな?お父さんかお母さんは?」「……これがお父さんで、これがお母さん」そう言って、淡い色をしたその少女は、青い色鉛筆と白い色鉛筆を警察官に手渡した。
釣り具屋に行くと、ルアーのコーナーにマネキン人形の首があって、店の親爺に尋ねたら、一年に一度くらい、同じ目をした釣り人たちが買っていくのだという。
今日は何だか冴えない一日だったなぁと思いながら家に帰り、何気なくテレビを点けると、ニュース番組が流れていて、アナウンサーの下のテロップに「サポート期間終了」の文字と、俺の顔写真が映し出されている。
我が家の大黒柱は時折蜜が染み出してきており、夜になると、その日嫌なことがあった家族の誰かが集まってぺろぺろ舐めている光景がよく見られる。
こちらが、お客様があの方と出会った年のワイン、そしてこちらが、お客様があの方を山に埋めた年のワインとなっております。
仕方ないでしょう、母の死体越しに話しかけないと、うちの妹は笑わないんだから、そんな、人の家の事情に警察が、なんだ、このっ。
四歳の自動車事故の時も、十六歳の自動車事故の時も、そして今回の三十二歳の自動車事故の時も、思い返してみれば、轢かれる直前、全く同じ女が助手席から、ドライバーに何か耳打ちしていたのを見ている。
脱ぎ捨てたパーカーのフードにぽつんと入っていた一本の小指を見ながら、今日の散歩コースを必死に思い出している。
娘が嫁に行った直後から、物置の中の雛人形のお腹がだんだん膨らんできた。
何だか、だあだあむにゃむにゃ言っている謎の院内放送が流れた直後、新生児室から新生児たちが爆笑する声が聞こえてきた。
ある日家を出ると、玄関の前に、近所に住む男の子が立っていて、「今夜はお魚になる夢を見るので、遊びに来てください」ともじもじしながらシュノーケルを手渡された。
家の中でゴキブリを見かけることが多くなったので、ゴキブリ用の罠を家じゅうに仕掛けた翌日、母さんがいなくなった。そういえば母さん、家族の中で唯一ゴキブリを怖がっていなかったな。あれから毎日罠の中を確認しているが、今のところエプロンの切れ端一…