超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

王国の夜

 かつて都市の下水道だった地下道を、黒衣をまとった猫たちが、蝋燭を掲げ持ち静かに歩いていく。地下道の両側には、どぶ鼠の石像がずらりと並んでいる。黒衣の猫たちは進む。石像の奥に、玉座が設置されている。玉座には威厳あるどぶ鼠が座っている。どぶ鼠は肘かけに肘をつき、じっと目を閉じている。黒衣の猫たちが玉座の前に到着する。黒衣の猫たちは跪く。どぶ鼠は動かない。一匹の老猫が歩み出て、深々と頭を下げ、おもむろにどぶ鼠の脈を計る。脈はとまっている。老猫がどぶ鼠の背中に回り、ファスナーを開ける。中から子猫の死骸が出てくる。老猫は手を挙げて合図を送る。黒衣の猫たちの中から、一匹の子猫が歩み出る。