超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ちゃんとした人

 家の裏にある月極の駐車場には、地面に白いペンキで「蝶」と書かれたスペースがあり、真ん中に花瓶に活けた数本の花が置かれている。「蝶」の文字の通り、そのスペースには毎日数匹の蝶がふらっとやってきて、花の蜜を吸ってはまたふらっと去っていく。眺めていてほのぼのする光景だ。時折、鳥がやってきて、蜜を吸っている蝶に襲いかかって食べてしまうことがある。だが、そういう時は必ず、あとでゴミ捨て場にその鳥の死骸が転がっている。どんなに遅くても次の日の朝には、必ずだ。きっと駐車場のオーナーが、すごくちゃんとした人なのだと思う。私は毎日「蝶」の駐車場を眺めるのが楽しみだ。