超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

日々勉強

「食パンの耳、取ってもらえますか」そう言うとパン屋の店員はにこりと笑い、「かしこまりました」と答えつつ、耳の部分のネジを手際よく外して、あっという間に耳のない食パンにしてくれた。近くの公園へ行きベンチへ座り、家から持ってきたジャムを隙間なく入力して、ピコピコと一人でランチをはじめる。それにしてもあの耳の部分、好きだという人に出会ったことがないが、どうしてわざわざとりつけるんだろうな。そんなことをふと思って仕事帰りに図書館に立ち寄り、食パンの歴史を調べて驚いた。食パンもジャムも今のものとは似ても似つかない代物じゃないか。昔の人はこんなものを食べていたのか。食パンの耳って元々こんな風になっていたんだ。そうか、耳ってこの名残なのか。ええっ、それに、ジャムって塗るものだったのか。全然想像がつかない。本当に、日々勉強ですね。