母の遺品の中から、俺の色をした小さな毛糸玉が、転がり出てきた。
「何これ?」
洋服箪笥の中を整理していた父に尋ねると、父はこちらをちらりと振り返った後、再び背中を向け、
「お前が生まれた時のやつだよ」
と、ぽつりとつぶやき、手元のアルバムから一枚の写真を抜き出して俺に投げた。
若い頃の母が、俺の色の毛糸玉を膝に乗せ、何か人っぽいモノを編んでいるところの写真だった。
「そういや……」
父がふいに顔を上げ、
「一度、野良猫が家に入ってきて……危なかったなぁ」
そう言って、泣いているんだか笑っているんだかわからない、かすれた声を出した。
俺の猫嫌いは、だいぶ根深いところからきているらしい。