超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ゆうべの歌

 ゆうべの私の鼻歌に誘われてきたらしい一艘の船が、浴槽の残り湯にぽつんと浮かんでいた。
 またやってしまった。
 船の上の人々は、ぼんやり立ち尽くす私を見上げてぴーぴー何かわめいているが、申し訳ないけど私にはどうすることもできない。
 なるべく船の方を見ないようにして、一思いに風呂の栓を抜いた。
 シャワーヘッドにとまったカモメの群れが、哀れむような目で私を見つめていた。