超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

夜の重さとペーパーナイフ

 最近、布団に入るたび、夜が重い、夜が重いと、思っていたが、今日、とうとう夜の重みで、僕は平たく延ばされてしまった。

 寝返りを打つことも、助けを呼ぶこともままならない。

 困ったことになった。でも僕は少し落ち着いて、朝になれば元に戻っているだろうと、考えて、眠ることにした。

 

 部屋に朝が訪れても、僕は平たく延ばされたままだった。

 会社にも行けないし、楽しみにしていたラジオも聴けない。どうすることもできずに、布団の中で平たくなって、しくしく泣いていたら、泣きつかれていつの間にか、眠ってしまった。

 

 しゃっ、しゃっ、と、夢の中で妙な音を聞き、ふと目を覚ますと、夕暮れの部屋、僕の傍らには、ペーパーナイフが転がっていた。

 僕は二枚に開かれていた。

 中身はすでに空っぽだった。

 

 なぜかもう、悲しくはなかった。

 僕は平たく延ばされて、ペーパーナイフで開かれて、中身を勝手に持ち去られ、次はきっと、くしゃくしゃに丸められて、捨てられてしまうのだ。

 次はきっと。