超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

雨と口笛

 雨音で目が覚めた。
 朝から雨か。そう思い寝転んだままカーテンの隙間から窓の外を見ると、青空が広がっている。
 首をかしげもう一度耳を澄ますと、雨音は私の背中の下から聞こえてくる。どうやらベッドと床の隙間に雨が降っているようだ。
 寝返りを打ち、片方の耳をベッドに押し付けると、雨の中をうろうろと歩き回る足音に気づいた。口笛まで吹いている。誰かを待っているようだ。
 馬鹿馬鹿しい。
 泣き腫らした目をこすり、頭から布団をかぶった。淡い暗闇が目の前に広がる。ベッドの下の雨はまだ降り続いていて、足音も口笛も止む気配はない。起きていても仕方ないから再び眠ってしまおうと目を閉じたが、気持ちの方はしゃっきりしてしまって、うまく寝付けない。
 そのうちベッドの下の口笛はやみ、足音は新しい足音とともにどこかへ去って、しばらく雨音だけが続いていたが、やがてそれも消えてしまい、あとはぴちゃん、ぴちゃんと水溜りに雨粒が落ちる音だけが響いていた。おそるおそる布団から出てカーテンを開けると、青空のあちこちに雨雲がしみみたいにこびりついていた。