超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

鳥と顔

 毎朝部屋の窓辺に小鳥が集まってくる。人に慣れているので、羽や背中を触ってもちっとも逃げようとしない。胸を指でさわさわと撫でてやると、うっとりとした表情になり、喉をころころと鳴らす。
 よほど気持ちいいらしく、その顔はやがてどろどろに溶けてくる。全て溶けてしまう前に、絶妙なタイミングで指を離すと、小鳥は我に還り、溶けていた顔がさっと固まる。しかし元の顔には戻れない。
 今朝は僕のお母さんの顔になった。昨日は僕の初恋の女の子(湯澤さん)の顔だった。恥ずかしい。2つ上の兄貴はこの間、ジョン・レノンを撃った人の顔を出したというのに。
 そんなことを考えていたらお母さん鳥にウンコをかけられた。仕方なく髪を洗って学校に行った。朝のシャンプーは頭皮に良くないと知ったのはそれからずいぶん後だった。