2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧
「うん、似てきたね。その調子」鏡職人である祖父が、先日作った鏡を覗いてそう声をかけている。
貴兄の結婚式の引き出物でいただいた胎児ですが、フラスコにひびが入るほど大きくなりました。今後が楽しみです。今年もよろしくお願いいたします。
曾祖父が愛用していたというタイプライターを見せてもらったら、「し」と「ね」のキーしか刺さっていなかった。
「取れてますよ」来園客に指摘され、飼育員はガムテープ片手に、ゾウの檻へ向かう。
あれ、えーと、君の国のジャンケンだと、首吊り死体は飛び降り死体に勝つんだっけ、負けるんだっけ?
彼の車に女の生首。「カーナビだよ」と彼は言う。そのままドライブ。車がラブホテルに近づくにつれ、「悔しい、悔しい」生首の声が大きくなっていく。
詩力発電所で鉛筆を削るアルバイトをしています。やりがいのある仕事です。
「うちの子は泣かないから助かりますよ」彼女はそう言って、小さな芽の出ている植木鉢に母乳をかけた。
いやー、もう目ペコだよ、何か旨いもん視てぇなー。
授業前に、クラス全員鼓膜を破りました。もう先生のピアノも怒鳴り声も聞こえません。
母ちゃんに編んでもらった首吊り縄で首を吊ったのだが、あと少しというところでちぎれてしまった。わざとなのだろうか?
その文房具屋に入った人はなぜか必ず、ペンの試し書きの紙に「死にたい」と書いてしまう。あ、ぼくも……。
祖父が一人で寝ている部屋から夜中、話し声が聞こえてきたので、そっと襖を開けて中を覗くと、死んだはずの祖母が祖父の耳元で「持っていきますね、持っていきますからね」とささやいていて、次の朝、祖父は冷たくなっていた。
「おばあちゃん、無駄だよ」私が祈りを捧げていた仏像を取り上げて孫は、仏像の足の裏に刻まれた数字を指した。「使用期限」と書かれていた。
床暖房が壊れたらしいので調べてもらうと、床下にあったのは機械ではなく四つの骨壺だった。
町の外れに、ブロック塀に「洗脳 600円~」と書かれた小さな看板が掛けられていて、時折幼稚園の先生のような人や会社の社長さんのような人がじっとそれに見入っている。
お隣の奥さんが雲食べるダイエットしているから、この頃この辺りはいつも快晴。
「ママ、見て、時計のおじさんの頭がパンパンに膨らんでるよ」「じゃあもうすぐ12時ね」
「悪い人なので買取不可です」そんな店員の言葉を思い返しながら、売られるはずだった母と、売るはずだった息子が、長い距離を取ってとぼとぼと夜道を歩いている。
いや、この蛍の群れは確かに綺麗なんだけど、かすかに聞こえてくる「充電やばい、充電やばい」って声が気になるのよ。
ボランティアでゴミ拾いをしていたら、竹藪の奥に見慣れぬ器具が捨ててあった。「懐かしいなぁ、良い子にする器具だ」ボランティア仲間のおじいさんが言う。へぇ、私たちは薬で良い子になったけど、昔はこれだったんだ。痛そうだなぁ。
休日の朝、ラジオを点けると蝉の声を特集していた。そうか、地球はもう夏か。部屋の設定温度を上げ、夕方の音楽番組に「遠雷」をリクエストする。さ、ビールを買ってこようっと。
「今夜も××ちゃんがいい夢を見られますように」お母さんはそう言って今夜も、ぼくの枕に五百円玉を入れてくれる。ぼくが十八歳を過ぎたら、千円にしてくれるそうだ。
「てんとうむし払いできます」そんな貼り紙のある駄菓子屋のレジに、男の子と老婆。レジの上にはてんとうむしが一匹と飴が三つ。「背中の点がもう一つ多ければアイスも買えるよ」老婆がそう言うと、男の子は目を輝かせて公園の方に駆けていった。
最後の日は快晴になりそうです。神様は優しいですね。皆さんはどう思いますか。もうどうでもいいですかね。はい、では、今までありがとうございました。
火葬場の煙突から、風船が一つ、二つ、三つ……ああ、きっと、ピエロを焼いているんだね。
私の町では、毎日夕方五時になると、ウェディングドレス姿のお婆さんが現れて子どもたちに「結婚しよう」と迫ってくるので、みんなきゃあきゃあ言いながらまっすぐ家に逃げ帰ったものです。
朝起きて、鏡を見ると、今日は右頬にほくろがあるので、字が汚くなる日だ。
食用同士の結婚ねぇ……。
ここ数年、毎年、卒業式の後は、抜け殻を片づけるのが大変だ。最近の子は持って帰らないんだなぁ。