雷売りのおじさんが軽トラの運転席で居眠りしていたが、そのいびきが売り物の雷よりうるさくて笑ってしまった。
夜中、粗大ゴミ置き場から聞こえてくるやかんの寝言を聞いていたら、カップラーメンが食べたくなってきた。
私がこのコタツで蜜柑の白い筋を剥き始めて、そろそろ千年が過ぎようとしている。
彼の血を吸ったことを称えられ、彼の家族たちの拍手喝采を浴びた蚊は、結局その拍手に巻き込まれて潰れて死んだ。
その宇宙人は、地球のお土産に、殺虫剤を一つ持って、星に帰った。
くしゃみしたら鼻の穴からアゲハチョウが飛び出したので、何かとんでもない噂話をされているようだ。
母の墓石に埋め込まれているパチンコ台で、友人の葬式の香典にしようとしていた金をすってしまい、母のことがますます嫌いになる。
紙幣の肖像にナメクジが描かれている小国に、ある夜大量の塩が運び込まれる。
彼らの脳味噌はつるつるなので、クレーンゲームのアームがなかなか引っかからなくてもどかしい。
古本屋に置かれている空気清浄機のフィルターに詩がびっしり張り付いている。
月が久しぶりに失恋したというので、今夜は町じゅうの人々が電気を消してカーテンを開けている。
哺乳瓶を兼ねているロケットがその星へ飛ばされるのも、今日で最後だ。
「ただいま皆さんの影のデータを集めております……」というアナウンスとともに、夕日が沈んでいく。
夕日というものを見てみたいと願った子どもたちのために、大人たちは各々電子レンジを抱えて、地平線へと旅立った。
「これもあげるよ」と言って、金魚すくいの屋台のおじさんは、自身の腕からうろこを一枚剥がして、僕にくれた。
実験室の隅のシャーレの中の町から祭囃子が聞こえてきて、僕らは思わず顔を見合わせた。
「この子まだ決まってない」と言って娘が抱き上げた野良猫の影がキリンの形をしている。
お父さんと銭湯に行って、お父さんの背中を流している時、その背中のファスナーを見て、いつか来る自分の成人の日に思いをはせた。
ある明け方、月がお風呂を借りに来たが、満月だったので、湯船の湯はたくさん溢れてしまうだろう。
満員電車に乗り合わせた全ての人の鼻から鼻毛が出ているのを見て、お父さんの実験、うまくいってるんだな、と実感する。
動物園の近くにあるその神社の賽銭箱は、林檎やバナナも入れられるようになっている。
月が入っていた段ボール箱の中で兎を飼う。
その虫を捕る罠を作るために、薔薇の花束とワインを買う。
この町の郵便ポストに開いている丸い穴は、流れ星を入れるためのものなんだよ。
台所の三角コーナーをふと見ると、残飯の上に、蝿の名刺が数枚置かれていた。
蜜柑を与えると開く改札がメンテナンス後、白い筋を取らないと開かないようになって面倒だ。
風鈴を買ったから、明日の風を予約しておいてちょうだい。
夏祭りの金魚すくいの屋台で、前世も金魚の金魚だけをすくって飼う。
蝶々賭博の現場に突入した刑事たちが、花の匂いに思わずむせる。
天国のママに会いたいから肩車して、パパ。